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CROSS WIZARDZさん
ブロンズレビュア
Update:2009/6/19
得票数:18
プロフィール:
CROSS WIZARDZさんに一票!
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題名レビュー星の数
サイコ例えば、階段の踊り場での殺人シーンにおける犯人を隠す「俯瞰」。或いは、オフスクリーンでのベイツの母親の存在感の際立たせ方。あえて見せない事で観客の想像力を掻き立てるという演出は流石。シャワーシーンの衝撃度は、恐らく映画史においてもマックス。排水溝のアップに、キュルキュルという音。★★★★★★
北北西に進路を取れヒッチが長年作り続けた巻き込まれ型サスペンスの最高到達点。凄い作品だと思う。グラントのユーモアに満ちた造型。飛行機の爆音だけで緊張感を高める演出。国連ビルからの脱出シークエンスに盛り込まれた後の「鳥」にも通じる驚愕の視点移動。列車の使い方。イギリス時代からあらゆる逃走劇を撮ってきたヒッチのアイデアが集結している。文句なしの傑作。★★★★★★
めまい色彩豊かな「美しい」映画。例えば、尾行シーンでの扉の向こうに広がる花屋の華麗な構図。切り取って絵画として飾っておきたいような程の美しさだ。教会内の螺旋階段を俯瞰で捉えた構図も美しい。或いは、ロケショットの淡い色彩設計による幻想的な美しさ。とにかく、全てのシーンがめまいを起こしそうなほどに美しい。★★★★★★
情婦躍動するワイルダー流コミカルが、アガサ・クリスティの完璧すぎるプロットを懐柔し、映画としてのエンタテイメントを演出する。まさに、理想的ケミストリーだ。マレーネ・ディートリッヒの凛とした存在感に、威圧的なドイツ訛り。チャールズ・ロートンの気の抜けたようなキャラクター造型。階段の奇天烈な装置は、ワイルダー一流の遊び心。ドンデン返し抜きでも楽しめる所にこの映画の凄さがある。★★★★★★
現金に体を張れこの手に汗握る濃密かつ多面的な時間の流れ。終始物凄いスピード感を維持しているのだが、リアリズムとシニシズムが奇妙に乱反射し象られるある種の冷徹さは恐ろしい程冷静に掬い取るのだ。この冷徹さが何より怖い。取り分け、死を見つめるカメラの冷徹さとラストに代表されるペンを走らせながら含み笑いを浮べていそうなプロットの冷徹さ。本作によりキューブリックの作家としての資質が決定したと言っても過言ではないだろう。★★★★★★
波止場物凄い力感。まるで墨汁で手紙を書いているかのような強引さ。こういう力強い演出はまさしくカザンならではだと思う。そして、この役者陣の素晴らしさ。ブランドの「チャーリー」には参りました。リー・J・コッブの暴漢ぶり。エヴァ・マリー・セイントのヒロイン然としないヒロインぶり。ロッド・スタイガーの板挟みぶり。そしてそれを包み込む、カール・マルデンの包容力ある演技。文句無しの傑作。★★★★★★
オール・ザ・キングスメンブロデリック・クロフォードの物凄い声量、声量。この声量の強引性だけで充分に民主主義のシニカルを突いている。「スミス都へ行く」のアンチテーゼのような力強さと、ラストの強烈な突き放し。そして、人間の「嫌味」を決して薄めない踏み込みの鋭さ。胸倉掴んでくるような映画ですね。とにかくクロフォードの演説の力感が良い。★★★★★★
カサブランカプロットや画作り自体はオーソドックスと言えばオーソドックスだが、しかし、ここでの女性を見つめる視線の映画的な鮮やかさ。峻厳でありながらもある種の慈愛に満ち、突き放す一歩手前まで行きながらも、最後には抱き寄せるだけの包容力がある。それ故に観る者の魂と共感し、強く心を打つのだ。全世界的規模での共感を生み出すだけの映画的な方程式がきっちりと確立している。★★★★★★
バルカン超特急 ★★★★★★
ビッグ・フィッシュ物事の表面を丹念になぞりながら、深層に入り込むバートン・スタイルが、この物語と絶妙にマッチしている。生気に溢れた贅沢な色彩感覚の世界と朽ちていくもののセンチメンタリズム。バートン作品は、シビアな場面できえ、撮ることの快楽がひしひしと圧倒的に伝わってくる。そして、虚構と真実が交じり合うラストのスリリングな温かさ。あの収束には鳥肌が立つ。★★★★★
テキサス・チェーンソー五臓六腑しみわたる音の映画。チェーンソーの凄まじき音量も度肝を抜かれるが、そこかのイマジネイティブな飛躍力の凄いこと、凄いこと。想像が勝手に更なる陰惨を作り上げてしまう。それにしてもチェーンソーは、嫌な工具だ。★★★★★
ニューオーリンズ・トライアルホフマンとハックマンを揃えた時点でこの映画の勝利。後は何も要らない。トイレでのconfrontationの物凄い力感に圧倒される事必至。願わくばあのような二人の対峙シーンがもう2つ3つ欲しかった。★★★★★
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル社会性と娯楽性のバランスに長けているパーカーらしい作品。それにしても緞帳を下げるタイミングの素晴らしさ。また、その際のケビンの表情の深遠さ。表情とタイミングの絶妙な映画的シュールレアリスム。或いは、感傷性を頑なに拒んだアンチクライマックス。冒頭のロングのワンショットが醸し出す得体の知れなさと、それが円還を成すというリリカルな時間軸操作。★★★★★
ゴシカアクの強いキャラが玉ねぎの皮ムキ状態で新たな心模様を露わにしていく面白さ。ロバート・ダウニー・Jr.。あの腹に一物ありそうな面持ち。善人であるはずの無い、いや、善人であってはならないあの「顔」を、どう使うのか。表か裏か。はたまたそれさえも超越したシュールレアリスムか。一方、ダットン。善人であるべきその柔和な面持ちは、まやかしなのか、はたまた、裏の裏をかくシニシズムか。恐ろしき人間万華鏡。★★★★★
ドッグヴィル芝居の書割のようなセットと同様、村人達の描き方も現実的ではないが、その分人間の最も根源的ないやらしい部分を容赦なく暴き出している。そして、辿りつく恐ろしい深度の絶望。壊れそうなほどの繊細さが、圧倒的激しさへと変転を遂げる瞬間のシュールレアリスム。この映画で語られようとしているのは案外古めかしいテーマなのかもしれないが、これでもかという程の「極端性」が横溢して、結果として「新しい」ものとなっている★★★★★
ミスティック・リバー ★★★★★
戦場のピアニスト恐ろしく真実に迫った作品。しかしながら、それは、映画における真実だ。一人の人間を徹底追尾した先にあったのは、感情でも感傷でもなく、ただひたすらな生への執着であった事の真実は、映画的にはスピルバーグが切り捨てるであろう一片だ。ポランスキーがあえて、その「一片」に執着した作家性と、「構図」への妄執にも似た拘り。オスカーではない、パルム・ドールのポランスキーがここにいる。★★★★★
アバウト・ア・ボーイイギリス、イギリス。行ったことがある訳ではないが、もうイギリス以外何ものでもない空気感が詰まっている。ロンドンの街並みとコテコテのイギリス訛りを聞かされると同じ英語圏とは思えない位に、まるで東南アジアの小国に紛れ込んでしまったかのような錯覚に陥る。まさしく別世界。ただ、そういうのを抜きにしてもこの映画の「物語」は面白いと思う。何の変哲も無い話のようで、実にセンシティブなテーマ性を内在している。★★★★★
ドニー・ダーコ夢と現実が等価値であるかのような倒錯的世界観に、屈折しまくりの少年。まさしく、裏ビバリーヒルズ高校白書のごときシュールレアリスム。意図的な曖昧さがこの映画の多層性と複数の解釈の可能性を生むという点において、リンチを彷彿とさせる。★★★★★
愛しのローズマリー「メリー・・」に比べると大爆笑度は低いものの、後半の泣きの展開が抜群に良い。取り分け、ブラックの「Which is Why I'm goin with you」と言うセリフの後にダリアス・ラッカー「THIS IS MY WORLD」が被るシーン。あの哀愁イントロには鳥肌が立つ。こちらが照れてしまいそうな程の、それこそトレンディドラマ全盛期の月9のような泣きの演出だが、包み込むような優しさと心躍るような激しさを合わせ持っているのだ。★★★★★
ビューティフル・マインド「人間」を描くのだという「誠実」さが感じられない作りに一抹の違和感を感じなくも無いが、サスペンス好きには堪らない演出。しかも実話というラベルが貼ってあるものだから、全く以って虚を衝かれた。しかしながら、こういう伝記を、伝記「のような」ものへと降格させた脚本の「大胆さ」は、やはり、諸刃の剣だ。これは紛れも無く、ハリウッドに蔓延している「シックス・センス」病の後遺症。★★★★★
ハンニバル恐ろしいほどの繊細さと、恐ろしいほどの剛胆さ、その対極を結合できるリドリー・スコットのシュールレアリスム。博士を肉食獣へと変貌させたその容赦ないキャラクタリゼーションはどうだ。ネバネバとした粘膜質なタッチで、臓器という臓器を露出させるパラノイア。ムーアのクラリスも悪くない。冒頭の「FBI!」の声量。訓練生からベテラン捜査官へ変貌を遂げたという事実を、あの声量が饒舌に語っている。★★★★★
シーズンチケット ★★★★★
ザ・ウォッチャーキアヌがイマイチなのは確かだが、しかし、「メイトリックス」であろうが何であろうが彼の演技は常にイマイチなのだ。だからこそ、あえて彼のマイナスを無視して評価したい。スペイダー、マリサ・トメイが素晴らしいではないか。あの二人の複雑性は、近年稀に見るロマンチズム。あの距離感は、広げたくも縮めたくもない、「保ちたい」距離感だ。あのような距離感を表現できる二人はやはり大したものだと思う。★★★★★
アンブレイカブル何より事故における唯一の生存者という掴みが秀逸で、現実においても我々はその強運とも偶然とも取れない数奇な運命に何かしらの超自然を感じるであろう。今作はその潜在的思考をオープニングの段階で呼び起こしたのである。後の展開に若干の押しの弱さも垣間見れるが、どんでん返しの予兆のようなものは終始感じさせる。落ち自体は脆弱で、幾ばくかの消化不良も感じさせるが、道中のスリル感が良かったので充足感は得られた。★★★★★
13デイズ「JFK」がヤンキーだとすると、この映画はまさしく優等生。丁寧に、丁寧に史実をなぞりながら、事の本質へと肉薄する。ソ連側の内情を描かない演出により、冷戦下のソ連の得体の知れなさが際立ち、事実という外枠がありながらも、それこそ実際に戦争が起こるのではないかという類のスリリングを捻出することに成功している。ただ、それでもキャストが少々地味か。★★★★★
M:I-2デ・パルマ版が変化球主体の軟投派だとすると、本作は150キロを超す直球主体の速球派。細かいトリックや複雑な人間関係は無いが、有無を言わさぬジョン・ウー印のアクションがある。扉が爆破されスローで炎が燃えさかる中を白い鳩が舞い、ゆっくりトムが姿をあらわすというシーンは、「明けましておめでとうございます。ジョン・ウーです。」と語っているかのような画だ。★★★★★
救命士J・グッドマン、V・レイムズ、T・サイズモアといった曲者達を媒介に地味な職業を多面化してく手際が鮮やかだ。都会の病巣を抉り出す時のスコセイジは、圧倒的に面白い。確かに、「タクシードライバー」や「レイジング・ブル」のような鋭い踏み込みは無いが、だからこその客観性が圧倒的に魅力的だ。★★★★★
アイズ ワイド シャット恐ろしいまでの色への執着。電飾の一つ一つが、キューブリックの最後の狂い咲きのようなパラノイア。キューブリックの映像設計はロジカルで、数学的な思考によって裏打ちされている感がある。生理的欲求とは違う、論理が画面を支配するシュールレアリスム。しかしながら、この「狂気の色」は、彼がキャリアで築き上げたそういうロジックを否定/超越する。それは、文学的な曖昧さの象徴であり、数学的から文学的への移行。★★★★★
ラウンダーズポーカー絡みと言えば「シンシナティ・キッド」という名作があるが、あの作品と基本構造は同じ。マルコヴィッチがG・ロビンソンの席に座るといった所か。本格的な現代版ポーカー映画が無かったという当時状況を考えると作って良い時期だと思うし、「シンシナティ・キッド」の構造も巧く現代版に当てはめている。クッキーの使い方なんかも面白いし、ノートンの位置関係も良い。ヒロインは影が薄いが、全体のバランスは悪くない。★★★★★
ロック、ストック&トゥー・スモーキング ・・繋がってなさそうで繋がっているという危ういバランスの中、運命の糸にたぐり寄せられるかのように一つに結末に向う展開は、第三者的視点の下の嘲笑と、当事者であるかのような緊迫感を同時に喚起する。パンク・ロックなテンションでストーリーを語るガイ・リッチーの悪乗りシュールレアリスムが心地よい。★★★★★
アメリカン・ヒストリーXこの映画のノートンの視線は凄い。悪童時の据わった視線に改心後の柔和な視線。この視線の差異が、そのまま、刑務所での時間の経過を具現化している。視線だけで、作品一本養えるなんて大した役者だ。★★★★★
アルマゲドン個人的にはビリー・ボブ・ソーントン、そして、ウィル・パットンの位置関係が好きですね。ブシェーミの使い方は少々狙いすぎの感もあるけれど、ベン・アフレックのブルース・ウィリスとの絡みは抜群に面白い。流石にベン、リヴ・タイラーのラブストーリーは甘すぎて食傷気味だが、ビリー・ボブの「こいつら何者だ」的なcondescendingな視線は良いですね。★★★★★
ロミーとミッシェルの場合アニメーションをそのまま実写にしたようなシュールでド派手なヴィジュアルに、適度に甘酸っぱいレトゥラスペクティヴな語り口。一見中身空っぽのように見えて、案外切実なテーマを扱っているようにも見える。若者の都市への憧憬、いじめ、都市生活での現実。それら複雑な難問が同窓会という一つのイベントで流麗に氷解する鮮やかさ。ミラとリサ・クドローのコンビも良いし、そこに絶妙に絡むジャニーヌも素晴らしい。★★★★★
普通じゃない恐らく90年代に作られたラブコメの中でも最も純度の高い作品。現代映画においてこれ以上の純度は、商業ベースとしては成立し得ない。それ位のラブコメ純度を保持している。ホリー・ハンターが文句なしにベストだが、キャメロンも追随。また、シャローブやスタンリー・トゥッチといった曲者もいい位置関係を保っている。傑作と呼ぶに相応しい出来。★★★★★
オースティン・パワーズ二作目、三作目くらいになると、それこそ新喜劇のような待ってました的お約束が確立し、「これこそオースティン」というシーンに喜べるのだろうが、流石に一作目だと周りはかなり白けるか。しかし、この映画「妙に」つぼにはまる。それは、三作通じてヒロインが最もマイヤーズの色に染まっていないからだ。ハーレーが常に、寒いギャグを飛ばしたヤツでも見るかようなリアリズムを感じさせるシュールレアリスム。★★★★★
ブギーナイツ抑圧や迷いに対する前向きな内なる声の発露をこういう形でフィルムに投射することができる事こそこの監督の最大の魅力だと思う。妙に楽天的でありながらも、随所に物凄い鋭さで観客に迫るリアリズム。例えば、ウィリアム・H・メイシーのsuicide、例えば、ジュリアン・ムーアの物凄い落涙、或いは、ドン・チードルが融資を断られるシーンのつれなさ。★★★★★
世界中がアイ・ラヴ・ユーアレンが描き、撮り、歌い、走り、踊る。映画という名の形に自分の全てを注ぎ込んだ作品は、ダンス1つ、雲の色1つとってもアレン印。商業も芸術もミュージカルも超えたアレンの世界が圧倒的なまでに息衝いている。こちらが照れてしまいそうなほどの不細工なダンスと、これでもかというほどの「楽しさ」が横溢して、結果、その「歪なもの」が狂おしいほどに愛しくなる。あのワイヤーの使い方は、マトリックスへの挑戦状か。★★★★★
エグゼクティブ・デシジョン機内での漲る緊張感と緩急自在な演出、的確な人物描写で、重厚なドラマと、高い娯楽性とを兼備している。途中退場のセガールにおけるシニカルもアクション活劇における反則ギリギリの意外性として悪くない。でしゃばらないハル・ベリーの「節度ある」助力がオフ・スクリーンでのテロリストの恐怖感を増長。★★★★★
白い嵐死や生といった生物にはどうにもならない力を初めて正面から見つめたとき、そこには夢や希望といったロマンチズムとは乖離した人間の限界というものが見えてくる。この映画は、そういうかくも厳しいリアリズムに立脚しているように映る。「嵐以前」「嵐以降」でぶつ切りにしたような展開が、まさにその覚悟の現れだ。濃密な死の匂いと甘酸っぱい青春の薫りが詰まったかくも厳しいフィルム。★★★★★
秘密と嘘誕生パーティーの恐ろしいまでの冷徹さ。気休め的な大団円ではなく、むしろ悲惨とも言える終局。しかも、それをセンチメンタルに描くのではなく、淡々と流れるような、重意的なエンディングへ向かうシュールレアリスム。ヨーロッパの映画らしいリアリズムを湛えながら、文学的な味わいも損なわず「もののあわれ」を劇的に映し出す。包み込むような優しさと心躍るような激しさとを兼備したこれは傑作だと思う。★★★★★
ツイスター良い映画だと思う。それは、ヘレン・ハント側の雑草的観測チームと、強力な装備を誇るエリート的観測チームの対決図式が、あたかも「知恵」と「お金」の対比構造であるかのような社会性を感じさせながら、竜巻という一つの自然現象を中心に上手く機能しているからだ。そして、そこから醸し出される抜きつ抜かれつ感の素晴らしさ。牛が飛ばされる画の異様感だって悪くない。★★★★★
フロム・ダスク・ティル・ドーンまず大抵の人は両方を愛することは出来ないはずだ。恐らく前半派が多数派だろう。そもそも後半のような展開が好きな人間はこの作品にはたどり着かない。もっともっと深いカルトなB級にハマリ込み、こんなメジャーなクルーニーやタランティーノが主演を張っている作品など見向きもしない。いや、こういう華やかな作品は嫌うだろう。本作のマーケティング的なdisparityはまさにここにある。また、本作の凄さもそこにある。★★★★★
バットマン フォーエヴァー頑固に時代遅れのパンクロックを演奏していたのがバートン版だとすると、シューマーカー版は、パンクロックでは売れないと見切りをつけポップ・ソングを歌いだした産業ロックバンドだ。当然バンド内には亀裂が走り、例えばボーカルが脱退したりするわけだが(キートン脱退)、しかし、カラフルでプラスティックな色彩感とハリウッド・ポップなキャストのド派手なヴィジュアルは、地味さを拭い切れなかった従来版より魅力的だ。★★★★★
スモークお涙頂戴の映画ならば泣かしのセリフを吐かせるであろう所で煙草のショット。いいセリフに酔いしれたい所でも煙草のショット。この映画は「煙」も演技する。嘘をついて、カメラを盗んで、作り上げられる歪な形の善行が何とも人間臭くてブルックリン。 ★★★★★
デッドマン・ウォーキング息苦しい。全く以って息苦しい。濃密なまでに描きこまれた空気感に押し潰されそうだ。目では泣かずに「心が泣く」ボディーブローのような映画。男が罪人であろうと無かろうと、彼が確実に死ぬというその「予定」が痛い。そして、その変わりそうに無い予定を変えようと、負け試合覚悟で全力投球するシスターの姿こそデッドマン・ウォーキング。★★★★★
クイズ・ショウレッドフォードの作品らしく役者陣はどれも好演しているのだが、中でも個人的にはデビッド・ペイマー、ハンク・アザリア辺りの嫌味な演技が好きですね。また、グリフィン・ダンであったり、スコセイジであったり細部まで興味深いキャスティングをしているのもレッドフォードらしい木目の細かさだと思う。★★★★★
依頼人ただひたすらにドンデン返しで勝負した90年代のサスペンスにおいて、役者味だけで勝負した稀有なサスペンス。そういった意味では役者の映画だし、サランドンなんかはどの作品でも良いが、彼女「らしい」役どころで魅力を印象付けたという点では本作だろう。この頃のトミー・リーは尖っていて良いですね。メアリー・ルイーズも良い。また、W・パットン、A・ラパグリア辺りのねちっこさも秀逸。★★★★★
ナチュラル・ボーン・キラーズこれは完全にピカソ的な映画。一見メチャクチャで、しかしその実、綿密に計算されているようで、でもやはり、適当にしか見えないような、観る人によってその定義が変わる映画であり、また監督がオリバー故に、社会的に深いメッセージ性がある可能性が高いという少々ハッタリに近いペダッチック性を感じさせる映画でもある。いずれにせよ、中身空っぽでも何かあると思わせるオリバーの映画的強引性には恐れ入る。★★★★★
告発痛い、ベーコンもオールドマンも、観ている観客も痛い。この痛さが人間社会の膿。正義が蹂躙される事の不条理と、それがまかり通る人間社会のエアポケット。被害者、加害者、傍観者。この映画では、傍観者もまた加害者に範疇に収め、正義を貫く事の崇高さを説く。だからこそこの映画、痛い。主体的になれない映画の観客は、傍観者の視点でしか観れない。被害者の視点など想像力を越えている。痛い、ただひたすらに痛い。★★★★★

Fayreal

Cinema Review Ver 3.0
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