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CROSS WIZARDZさん
ブロンズレビュア
Update:2009/6/19
得票数:18
プロフィール:
CROSS WIZARDZさんに一票!
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題名レビュー星の数
ディスクロージャーダグラス、デミのハリウッド汚れ王決定戦。そういうしょうもない決定戦を名優ドナルド・サザーランドがジャッジするというシュールレアリスム。話自体はたいした事は無いが、主演二人の演技合戦は見応えあり。また、ガラス張りのオフィス、そしてその機能のさせ方などバリー・レビンソンも流石のクラフツマンシップを見せてくれる。★★★★★
トゥルー・ロマンスこれは、強烈なパワーに満ちた作品だ。それは、例えば、ホッパーとウォーケンの対峙シーンにおける張り詰めたテンションであったり、オールドマンの狂気性の表現だったり、あるいは、ブラピの堕落ぶりだったりが、物語の一場面としてコラージュ的な場所しか与えられていないのに、物語のメインストリームを乱さない範囲で、強烈に自己主張しているからだ。こういう演出が出来るスコットもまた、QT同様、大したものだと思う。★★★★★
ザ・コミットメンツボーカルの男の歌う際の表情が素晴らしい。あの陶酔と声と風貌。まさしくこの映画のインパクトだ。音楽の軽快感が荒んだ生活感に火を灯す感じのグラデーション。ユーモアとリアリティに満ちた語り口の妙。決して、秀でた役者がいるわけではないが、彼等が集団で集まることによって映画が弾けるのだ。物事の表面を丹念になぞりながら深層に入り込むA・パーカー独特の映画文法は、こういうストレートな題材だと尚一層に機能する。★★★★★
ケープ・フィアーデ・ニーロVSノルティの図式が圧倒的に面白い。例えて言うならば、デ・ニーロが不良だとすると、ノルティは不良にもある程度顔の利く優等生。善と「適度の悪」を使える強みがある。グレゴリー・ペック、ロバート・ミッチャムといったオリジナルの二人をきっちり押させる所はスコセイジらしいリスペクト。★★★★★
バックドラフト「炎」だけで一本拵えれるハリウッドの力技は流石。兄弟の反目、壊れそうな恋愛、破綻した家庭に犯人探し。プロットは単なる詰め込み主義の寄せ集めだけれど、この映画は「炎」を楽しむ映画。火災現場の野次馬的好奇心が擽られる。しかし、あそこにデ・ニーロを配するのはどうだろう。明らかに浮いている。★★★★★
デイズ・オブ・サンダー「トップガン」と全く同じアプローチで(それは製作レベルでのアプローチも含めて)作りえる最高到達点。もうこれ以上は望めない。いや、望んだら映画がパンクしてしまう。また、この時代にこのレベルのレースシーンを撮りえた事に驚愕する。それはバジェットの豊穣さに驚いているのではなく、物凄く的確なカット割に驚いているのだ。そして、トニーらしいトムではなくあくまでデュバルを光らせる演出。こういうバランス感が大切★★★★★
グローリー真正面から黒人を描こうとするズウィックの直向さが比類ないテンションを生み出す一方で、白人であるが故に一歩踏み込めない及び腰の面もあり、改めてこのような題材を描く事の難しさを痛感させられる。デンゼル・ワシントンやモーガン・フリーマンが見せる天性のリズムにどうしても付いていけないブロデリックに悲しくも深い人種の壁をみる。★★★★★
バットマンまず何と言ってもセットデザインが素晴らしいですね。ある種のidiosyncraticを感じさせながらも確固たる美意識のcriteriaは終始揺らいでない。また、バットマンも過度にtranscendさせてないのも良いですね。恐らくそれはアナログの限界ではなく、humanisticなものを見据えての選択だと思う。それにしてもニコルソン。圧倒的にニコルソン。「憎らしい」程に狡猾だが決して「憎めない」アンビバレントな悪役造型の巧さ。★★★★★
恋人たちの予感その後長く長く続くメグ・ライアンのラブコメ王朝のまさに幕開けであり、「スタンド・バイ・ミー」以降僅かに続いたロブ・ライナー短命政権の終わり。それにしても饒舌な映画。ダイアローグがどれも良く書けている。取り分け、序盤の車内での会話は秀逸。スプリットスクリーンを使って二つの会話を微妙にInteractさせるといった手が込んだ演出もやってますね。★★★★★
アビス「水」への拘り。そして、その先に見据える「海」という「生き物」の表情。漆黒の深海の底無しの恐怖、或いは、未知なる可能性を秘めた空間としての温かさ。キャメロンの描き出す「海」は圧倒的に表情豊かだ。それは、妥協なき空間造型の恩恵だろう。「タイタニック」同様、キャメロンの空間造型、取り分け、「海」の具現に対する妥協なき姿勢には頭が下がる。この説得力ある海こそがこの映画の至極。★★★★★
バグダッド・カフェただ成り行きに身をまかせ、心赴くままに歩くからこそ辿り着く場所に必然性が生まれるのではなかろうか。人間何かの束縛から放たれた時、自由になりながら同時にどこか途方に暮れることがある。そんな時、成り行きに身を任せてみればなにか面白い事があるかもしれないという事を気づかせてくれた作品。オープニングの「コーリングユー」が流れるシーンに、都市生活には無い自由という名のオアシスを見た。★★★★★
ブルーベルベット太陽の光が燦々とふりそそぐこの狂気漲る日常。リンチファンならば、これだけで飯三杯食える。日常と非日常、光と闇、狂気と正気が表裏一体であるかのようなこの空間の恐ろしくも美しさよ。映画人としてのリンチの寿命を延ばした作品であり、ツイン・ピークスで完成を見るリンチ・スタイルの原型とも言える作品。話自体は案外明瞭で、だからこそに底が浅い印象も拭えないが、これによりリンチは真相は闇の中路線へ傾斜したのだ。★★★★★
モスキート・コースト「インディ・ジョーンズ」、「スター・ウォーズ」で得た人気を御破算にする覚悟で演じた、ある意味においてハリソンの裏切り。極限下における理性の崩壊や、人間の信条こそが最大のトラップとなることを描きながら、最終的にはこの世界に生きることの意味さえも問いただそうとする寡黙でありながらも饒舌な物語。しかもそれを観念的独白ではなく、家族との対話の中に浮き上がらせているところに本作の傑出した点がある。★★★★★
ランブルフィッシュ人の配置に優れた構図が何より印象的だ。移動撮影は、コッポラらしい横への移動、俯瞰気味に移動する裏道でのシーンが良い。モノクロを選んだ理由は影の演出か。ウェルズを彷彿とさせるローアングルからの影、異様に伸びる影。青春群像の「不安定さ」より更に進めた、人間存在の淋しさを感じさせるシュールレアリスム。ただ、序盤の劇画調の決闘シーン、幽体離脱、そして何より、あの奇抜な着色がどうにも気に入らない。★★★★★
ガンジー「彼はすばらしい」という一言に尽きる作品。また、その思いしか沸かない所に今作の限界も見て取れる。それは、「ガンジーはすばらしい」という一つの結論に辿りつく道しか用意されていないが故の限界。次々紹介されるエピソード全てが同じ答えに辿りつく事の違和感は、何処か、洗脳的で、それこそ、ある意味においては自由性に欠けるのだけれど、それでも許せる所にガンジーの素晴らしさがある。★★★★★
ブレードランナーこの映画で描かれてる未来は、決して現実の延長線上にあるそれではなく、相当に粉飾や誇張がなされているが、かと言ってお伽噺とも言えない迫力があり、東洋と西洋が融合したエキゾティシズムが、それこそシュールレアリスムの支配下のもと見事暗い心象を浮かび上がらせている。センシティブな異境を際立たせる独特の色調や、音楽、哀愁漂うキャラクター造型。全てが、「エイリアン」を兄に持つ弟の反骨精神。★★★★★
レイジング・ブル「タクシードライバー」が刃物だとすると、本作は鈍器。切れ味は無いが、ドシドシと五臓六腑に染み渡る。ファイトシーンの恐ろしいまでに主観的なカメラワーク。信じられないほどに饒舌なモノクロ。スコセイジらしい自己主張がカメラを通してビシビシ伝わってくる。控え室からリングまでを手持ちのワンカットで撮った映画的嗅覚に驚愕。切ってはならない時間を知っている監督は、やはり強い。★★★★★
シャイニング今でも圧倒的な血の洪水と共にあのタイプライターの音が耳に残る。もはやここにキングの入る余地はなく掛け替えのない色と大胆なイメージの投影が踊るだけ。洗練されつつも感傷と形式的厳格さを失わない部分においてキューブリックは傑出している。正気と狂気の境界線上で悠然と胡坐をかく恐ろしき作家。原作蹂躙、ニコルソン放し飼い。主人公の心理を丁寧になぞりながらじっくりと生理的恐怖を呼び起こす粘着シュールレアリスム★★★★★
テス ★★★★★
カプリコン・1月面着陸の興奮冷めやらぬ77年に、娯楽映画がこういうアイデアをぶち上げることに驚嘆する。間違っていると知りながら、権力の前にどうする事もできないという苦悩が充満する交信シーンの緊張感は圧巻。無論、これらでっち上げのアイデアの貯金は序盤で使い果たしてしまうのだが、荒涼とした砂漠での逃走シーン、グールドの「ロング・グッドバイ」を彷彿とさせる飄々と真相を探る展開で、見事、序盤のリードを守りきる。★★★★★
スター・ウォーズ革命が起きるその朝は案外静かなものだ。映画において、ある種の「革命」をもたらしたこのスター・ウォーズの一作目もまた不気味なほどの静けさに覆われている。ぬいぐるみやミニチュアで目一杯広げられた世界観も今日的には、やはり狭さは拭えないが、しかし、漆黒の男の登場で空間は一変する。まさに千両役者。取り分け、あのゴォーという音。非常に不安定な、そして不気味な感情を呼び起こさせる音のシュールレアリスム。★★★★★
戦争のはらわた人間の生命に対する確固たる尊厳とそれが恐ろしいほど呆気なく崩壊してしまう現実。そういうかくも無残な乖離を痛ましい程鮮烈に描写している。ソ連とドイツという感情抜きの戦場を選ぶペキンパーのイデオロギーと、相も変わらずの哀切スロー。男臭さと情熱に満ちたペキンパーらしいエネルギッシュなシュールレアリスム。★★★★★
狼たちの午後杜撰な銀行強盗だからこそ胚胎するコミカルさと、それでも付随する残酷さの奇妙なバランス感が秀逸。ちゃちな銀行強盗でも、思いつき程度で社会批判を唱えれば大衆の支持を得られるという人間社会のシニカル。ヒーローという定義に揺さぶりを欠けるプロットの妙。ルメットは、毎作、入口こそ違えど、最後はキッチリ社会の暗部に肉薄する。★★★★★
ハリーとトント ★★★★★
タワーリング・インフェルノまさしくスペクタクル。ある種のArtificialityなど優に飲み込んでしまう位の驚愕のスケール。ニューマン、マックィーンを巧みに並置させた驚きよりも、こういうストーリーでフェイ・ダナウェイを存分に機能させた驚きの方が大きい。或いは、それでもポイントでSarcasmを表出させた懐の深さ。★★★★★
パピヨンこの映画の突き放した語り口は強烈だ。決して、手を差し伸べようとはしない。ただ、ひたすらに見つめるのだ。そして、独房での長い長い時間。商業も芸術も超えたマックィーンの世界が濃密なまでに息づいている。強さと弱さが同居する男の意地の時間を、シャフナーは決して縮めようとはしない。希望を求める魂が疾走する圧倒的快作。★★★★★
スケアクロウ不器用な男達を、何の装飾もなしに、ひたすら、第三者的視点で捉えるという不惑の演出。そこに、エンターテイメントとしての色付けは無く、手触りは圧倒的に無骨だ。さしたる結論も感動も無く、輩の人生の切れ端を、僅かながらに呈示したというスタンスは、映画としての起伏に欠けるのかもしれないが、その排他性こそがニューシネマの気概。ヒリヒリとしたアメリカの暗部を突き放した語り口で呈示した傑作。★★★★★
ゲッタウェイこの一筆書きのような潔いプロットの流れ。全く淀みがない。ぶれない。軸がしっかりしている。逃げるという行為を、ここまでオフェンスィヴに描いている作品は観たことが無い。例えて言うならば、サッカーで2点リードしていながらも、あえてフォアードを投入するかのようなアグレッシブさ。★★★★★
ポセイドン・アドベンチャー極限状態でぶつかり合う宗教、感情、打算、誤算。死と向き合いながらも、何処かで死から目を背けているという人間の偽らざる本質を鋭く突いている。ハックマンとボーグナインの相克のダイナミズム。生きたい、助かりたい、でも、コイツも憎い。極限だろうが、平時だろうが、男には相容れない部分がある。この映画は、そういう男の痛すぎる本質も抉り出す。達観した者には人生を語らせ、弱き者には徹底的に弱音を吐かせる人間絵巻★★★★★
わらの犬痛みや怒りを芸術に昇華し続けるペキンパー。彼の作品は、誰にも抱きしめてもらえない剃刀のような悲しさと強さを感じさせる。男にとっての「愛から派生する怒り」の姿を、スローモーションという飛び道具を用いて標本のように完全保存した作品。悪趣味とロマンチズムの境界線を取り払おうとするかのような泥沼系ストーリーに、ホフマンもどっぷり浸かる。片田舎にスーザン・ジョージという圧倒的アンバランス感もペキンパー印。★★★★★
ローズマリーの赤ちゃん得体の知れない不安感に苛まれる妻と、それを楽観的に諭す夫。そういう現代的夫婦像に肉薄したリアリズムを隠れ蓑に荒唐無稽を描くポランスキーのシュールさに吃驚。ゴードンの鬱陶しさやカサベテスの胡散臭さも秀逸だが、やはり本作はファローに尽きる。まるでグラデーションの如く表情が変化する様は、子を身篭る女性の気丈さと脆さが入り混じった玉虫色のリアリズム。日常に潜む恐怖を外堀を埋めるような嫌らしさで描いた傑作★★★★★
2001年宇宙の旅物語の因果律からはみ出しまくる映像の、しかし有無を言わさぬ力強さ、イマジネイティヴな飛躍力は他に類を見ない。盲目的に何かを希求すると、行く手には恐怖や不条理が待つ穴のようなものに吸い込まれるという心理的宇宙を描いているようにも映る。悲惨とも言える終局。しかも、それをセンチメンタルに描くのではなく、淡々と流れるような、重意的に紡ぐ冷徹さ。リアリズムを湛えながら文学的な味わいも失わない手触りに驚愕。★★★★★
招かれざる客昨今の米国社会においてracismは消えたのではなく、社会的要求のもと表層から深層へと移動したのだという見方があるが、そういう当時としてのracismの未来系を感じさせるようなプロットだ。racism反対の看板と心理レベルでのuncomfortable。そういう深層心理レベルでのracism克服を描いたところに本作の凄さがあるのだと思う。★★★★★
博士の異常な愛情 または私は如何にして ・・荒唐無稽の絵空事を、人間社会の投影として、シニカルにそして幾ばくかのメッセージを胚胎しながら、戦いたい輩を通して、戦争反対を言わずして、反戦の匂いを振りまく。この反面教師的な描写を、さも含蓄など無いかのように虚無主義的に流すことにより、考察を強要しないからこその自然な考察を喚起する。笑い、考え、また笑う。笑いの背後に潜む人間の愚かさが痛いほど身に染みる、人類の自虐的コメディー。★★★★★
アパートの鍵貸しますワイルダーらしい空間造型の素晴らしさ。ガランとした空間に無数の机が並ぶオフィスの造型や、ガラス張りの上役の部屋の造型などは、一種のデフォルメを感じさせるが、決して現実離れしているわけではなく、写実と誇張の境界線上にバランス良く立っている。また「無機」の象徴だったオフィスを、パーティー会場にしてしまう発想の転換。放り出された男の哀愁の深さを、公園のベンチの異様な長さにメタファさせた巧さも光る。★★★★★
お熱いのがお好き船上でのカーティスとモンローのシーンから、鋭いパンを経由してレモンと老人のダンスにクロス・カッティングする演出の上手さ。甘さが過ぎる所で、レモンにパンする絶妙のタイミング。まさに、シュガーと柑橘類の巧みな使い分け。甘さ調節が実に巧妙だ。モノクロを選んだワイルダーの決断力。多色ならば画面がけばけばしくなっていたに違いない。何でもカラーの映画過渡期の時代に、しっかりと踏み止まったワイルダーの矜持。★★★★★
ダイヤルMを廻せ!巧妙に練られているようで、精査すると実の所かなり脆弱であるという殺人計画が面白い。今作はその意外に脆弱な殺人計画が破綻する様を見て楽しむという、観客の悪趣味的好奇心をくすぐる作品である。こういう動きの少ない舞台劇のような手触りの作品は、同監督の「ロープ」に相通じるのではなかろうか。長まわしでストイックに舞台劇に肉薄した同作品とは違い、映画的な可能性を模索しながら舞台的な良さを追求している。★★★★★
裏窓これはある意味「会話」の映画。ジミーとグレース・ケリー、或いは、ジミーと看護人の会話の圧倒的なまでの面白さ。そういった意味では、脚本に可也のクレディットがあるのかもしれないが、室内での照明の巧さ、1カット説明、クレショフ効果、ラストの視線など、ディレクターの力を存分に見せ付ける演出力も流石だ。★★★★★
見知らぬ乗客殺人という非人道的行為を、臆面も無く交換しようと言ってのけるブルーノの人物像は、ユーモアと狂気が共存したまさにヒッチ特有のキャラクター造型。そんな大胆不敵、唯我独尊なブルーノに翻弄される男ガイもまた、清廉潔白という訳では無く、自己利益を追求する利己主義者的側面が垣間見れる。この辺の善悪の軸を明確に提示しない事がブルーノに幾ばくかの同情が集まる要因か。人物描写に長けたヒッチの快作。★★★★★
第三の男下水道での人影の黒に、水泡の白。そして、空間を広く取ったローアングル。閉塞であるはずの下水道が、何故かしら開放感に満ちている。ウェルズの悪童のような面持ちから、みるみる内に血の気が引いていく様を捉えたクローズアップ。被写体たる人間を画面の四分の一以下に収め銅像をフルサイズで収める芸術性溢れる構図、傾けながらもパースペクティブの生きた調和性のある構図。先鋭性と芸術性が見事兼備されたその画に感服。★★★★★
三つ数えろ決して収束に向かうだけがミステリのストーリーテリングではないと知らしめた恐るべき拡散ミステリ。ここではリンチも裸足で逃げる程の魅力的な不条理が展開される。それは、ノワールというジャンルの独立宣言のような高らかさだ。ノワールそのものに内包するシニシズム、ペシミズムといった心理的な暗さと、ボギーという役者の風貌、声質に内包するの心理的な明るさが絶妙な混合をみせる。だからこそノワールにはボギーなのだ。★★★★★
スミス都へ行くこの話に説得力があるのはシステムとしての民主主義の欠点(それは利益団体支配の構造への陥りやすさや、そこに起因する汚職の可能性)を呈示した上で、それでも優れているのはたったひとかけらの正義でも正しい方向へ導けるシステムとしての柔軟性を兼ね備えているからなのだという事を示したがゆえ。最近のSenも余りにPolarizeされてその機能低下が叫ばれていますが、こういうFilibusterは民主主義の美点の一つだと思う。★★★★★
パッション鞭の痛み、無知の痛み、無恥の痛み。この人間存在の痛みは尋常ではない。痛みの伴わないフィルムでは到底伝えられないものが詰まっている。無性に十字架を背負いたくなる。無性に改宗したくなる。理知的に説かれるという感じではないが、胸倉掴まれ怒鳴られるという類の強引性が納得性を凌駕し観客を意味不明の感動へと導くのだ。新興宗教の強引性に似てなくも無いが、これが宗教の産声なのだろう。ただ、過剰なスロー演出が邪魔★★★★
キル・ビル Vol.2爆笑、爆笑、大爆笑。アクションシークエンスの力の入り方からして大爆笑。それにしてもシュールだ。恐ろしいほどにシュールだ。あの緻密なカット割によるアクションの驚愕の完成度。それでいて、アクションの真似事をやってます的なスタンスは崩さないシュールレアリスム。マカロニ風味の決闘の盛り上げにも大爆笑。そして、その決闘のことごとくが呆気なく終結するというシニシズム。★★★★
デイ・アフター・トゥモロー悪くない。決して悪くない。エメリッヒとは思えない位に悪くない。J・ギレンホール近辺の描き方の稚拙さが邪魔だが、水攻め、寒さ攻めの展開が断然面白い。南極舞台で事足りるのではないかという疑念さえも吹っ飛ぶ、凍り付いた自由の女神のシュールレアリスム。或いは、マンハッタンを船が悠々と航行するシニシズム。荒唐無稽な空間に象徴的な建造物を放り込み構築される玉虫色のリアリズム。正しくエメリッヒのリズム。★★★★
21グラム恐ろしいほどの密度での人間ドラマ。そこには感傷さえ入る余地がない。全てのシーンが、まるで鍛錬された体操選手の競技を見ているかのような躍動感と緊張感だ。時間を操るようなスピード感あふれる映像が、感覚的なバラシ方のストーリーと相まって、真相を探るというサスペンス的吸引力を捻出。この吸引力が展開をダレさせない要因。「壊れた」ナオミ・ワッツの儚くも美しさ。彼女こそが本作のセンチメンタルな詩情。★★★★
ディボース・ショウクルーニーが良い。それこそ、ホークスのスクリューボールコメディにおけるグラントのお茶目なダンディズムを彷彿とさせる。「歯」へのモノマニアをアクセントとしてリズムを刻む快活性はいかにもコーエン節。惜しむらくは、コーエン・ワールド内でのJ・ラッシュをもう少し観たかった。★★★★
コールド マウンテン ★★★★
閉ざされた森「羅生門」ふうに何人かの証言から、フラッシュ映像で近過去と現在を交錯させる語り口は、真実に渦巻くドロドロした暗い心象を浮かび上がらせるのに効果的だ。ブルートーン映像に、絶え間なく降り注ぐ「雨」が絡みつき象られた過去の「忌まわしさ」さえも、驚愕のラストの前では一瞬にして雲散霧消。しかしながら、余りの強引さに暫し呆然とすること必至。決まり手は「肩透かし」か。★★★★
ホーンテッドマンション一見ディズニーらしい安全牌ばかり切っているように見えるが、なかなかどうしてセリフの随所に垣間見れるシニカルでリアリスティックな視点はシュール・コメディとしての側面を強烈に印象付けている。娘が蜘蛛をあっさり殺してしまうところなんかはこれまでのディズニー路線とは明らかに異なる。また、エディのセリフも冷めた視線のシニカルなものが多くて、面白い。★★★★

Fayreal

Cinema Review Ver 3.0
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